花の下で−布都彦編−
 布都彦は槍を振り下ろしながら考えていた。

 何を考えているのかと言えば、どうやって恋人に声をかけようか?ということだ。

 今朝、風早が布都彦に「千尋の好きな花が満開なので共に見に行くといいですよ」と声をかけたのだ。

 布都彦は風早の微笑の中に何か殺気のようなものさえ感じて、これは絶対に恋人を誘って花を愛でに行かなくてはならないと心に決めた。

 が、いざ誘うとなるとどう言って誘えばいいのかわからず、気持ちを落ち着かせようと槍を振り続けていたというわけだ。

「布都彦!よかった、まだいてくれて。」

「陛下!」

 声のする方へ振り返れば、今の今まで思い描いていた恋人がそこに立っていて…

「風早がね、桜が満開だって教えてくれたの。一人で見に行くとまた忍人さんに怒られちゃうから一緒に見に行ってくれないかなって…。」

 布都彦は槍をおさめながら苦笑した。

 どうやら布都彦の誘いを待ちきれなかった風早が千尋の方をたきつけたらしいとわかったから。

「今日はお天気もいいし、桜の下でお昼寝とかいいかなって思ったんだけど……布都彦、忙しい?」

「いえ、お供致します。」

「有難う!」

 千尋は嬉しそうに笑顔を見せると、布都彦の手をとって走り出した。

 驚いたのは布都彦の方だ。

 まさか手を引かれるとも走り出すとも思っていなかったから、布都彦が驚きで目を丸くしているうちに二人は森の中へとやってきた。

 するとそこにはちらりちらりと花弁を降らせる桜の木が。

「風早の言った通り。満開だね。」

 千尋はそう言って嬉しそうに微笑んだ。

 風に舞う花弁の中で微笑む愛しい人のその美しさに布都彦は思わず見惚れた。

 もともと花のように美しい人が花の帳に包まれている姿は、布都彦の目にはただただ光り輝いて見えた。

「布都彦?」

 名を呼ばれて我に返った布都彦は千尋を安心させるおゆに微笑んで見せた。

 するとほっとしたように小さく息を吐いた千尋は、桜の木の下に座ってすぐ隣の地面をポンポンとたたいた。

「今日は夜まで休みをもらったの。布都彦と一緒に花をゆっくり楽しみたかったから。」

 これは隣に座れと言われているのだと悟って、布都彦は顔を赤らめながらも千尋の隣へ座った。

 すると、千尋はとても嬉しそうな顔で頭上の花へと視線を移して、そのままそっと布都彦の方に寄り添った。

 一瞬驚いた布都彦はすぐ幸せそうにしている千尋の様子を見て口元をほころばせた。

 そして、次の瞬間、布都彦の脳裏に千尋の親代わりでもあったという従者の顔が浮かんだ。

 せっかく風早は自分に先に声をかけてくれたというのに、ここまで千尋一人が頑張ってくれた。

 このままでいいはずがない。

 布都彦はじっと隣に座る恋人を見つめて考えて…

 そっと千尋の肩を抱き寄せるとその唇に口づけた。

 一瞬、丸く見開かれた千尋の目がゆっくりと閉じていく。

 優しく重なる二人の影に、ひらりと薄紅の一片が舞い降りた。





管理人のひとりごと

桜企画拍手御礼SSバージョン、布都彦編でした♪
管理人の中で布都彦は千尋に引っ張られて引っ張られていくタイプとなっています(’’)(マテ
でも、最後の最後ではドカーンと大爆発する、みたいな?(コラ
風早父さんもその辺がわかっているので布都彦にはプレッシャーをかけます(w
色々あった布都彦なので考え込むことも多いのですが、若さゆえに暴走するのもいいかなと思います(’’)







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