※注:こちらはキリ番151515番を踏んで下さったケイ様より頂いたリクエスト作品となります。閲覧はどなた様も自由ですが、ケイ様のみお持ち帰りも自由とさせて頂きます。舞台は遙か4オールキャラがなんとなく出演しているゲーム中のお話です。では、どうぞm(_ _)m
イマジン
「たまたまでしたが、こういうのもいいものですね。」

 にこやかで穏やか、そんな声が湯気と一緒に当たりに満ちた。

 声の主は風早だ。

 湯船につかって今にも「極楽極楽」と言い出しそうな風早は、いわばこの中で最もこの場にふさわしく見える一人だった。

「なんでこんなことになってるんだか。」

 風早の隣で仏頂面のままむくれているのは那岐だった。

 彼は一人で昼寝を決め込もうと思っていたところを仲間達に拉致されるように連れてこられ、風早にまで押し切られてこうして湯につかっていた。

「いいじゃねーか、こうして裸の付き合いってのも。」

 こちらは風早と同様にすっかり風呂場に馴染んでいるサザキだ。

 サザキはすっかり今の状況が気に入ったらしく、翼を広げて心地良さそうに目を細めていた。

「良いも悪いも、必要だったのだからしかたあるまい。」

「確かにそうですが、私のような者まで一緒に入れて頂いて恐縮です。」

「布都彦、遠慮なんかしなくていいんですよ、みんな仲間なんですから。忍人ももう少し砕けたらどうですか?」

 苦笑する風早のことは無視して忍人はむっつりと不機嫌そうに湯につかっていた。

 対して布都彦は控えめに小さくなっている。

「花がないのは残念だが、まぁ、悪くはないな。」

 この場で最もくつろいでいるといってもいいのが彼、アシュヴィンだ。

 肌を見せるのは嫌だとか言い出しそうだと那岐辺りは予想していたのだけれど、予想とは反対にアシュヴィンはあっさり裸になってすっかり風呂を楽しんでいた。

 花がないというのはもちろんその辺に咲いている花のことではない。

 王族らしいといえばらしい発言に風早が苦笑を深くした。

「確かに花がないのは残念ですが、そもそも戦場に花を見出すことができる現状の方が稀有というものです。ここは致し方ありませんね。」

「柊まで何を言い出すんですか。」

「風早は相変わらずですね、昔から我が君一筋、今も変わらぬらしい。」

 眼帯だけは外さずにそれでも裸で湯船につかっている柊はその隻眼でちらりと風早を眺めた。

 風早は苦笑させられてばかりだ。

「にしても、遠夜は意外と気持ち良さそうだな。」

 サザキの言葉と同時に一同の視線が遠夜へと集中した。

 あれほど棺と呼ばれた服を脱ぐことさえ嫌がっていた遠夜だから、裸の付き合いなどとんでもないと言い出すかと思ったのに、千尋の通訳だと別に抵抗することもなく風呂に入ることを承諾したらしい。

 そして今もどこか気持ち良さそうな顔で湯に使っていた。

 ところで、どうして彼らが一堂に会して風呂に入っているのかというと…

 別に裸の付き合いで仲良くなろうとかいう企画だったわけでは決してない。

 移動中に急に豪雨に降られた上、歩いていた道が悪かったおかげで全員全身泥だらけになってしまったのだ。

 これは泥を落とさなくてはならないのはもちろんだが、体が冷えてはいけないというので風呂に入ることに決定した。

 もちろん、順番を決めて一人ずつなどと悠長なことは言っていられないので、全員まとめていっせいに入ることになったのだった。

 全員とはいうものの、当然のことながらこの場に千尋の姿はない。

 一緒に歩いて一緒に泥だらけにはなったけれど、男性と一緒に風呂につかるなどということを千尋がOKするはずもなく…

 千尋は厚めの板を隔てた向こう側の湯につかっているはずだった。

「遠夜もくつろいでるんですから、布都彦ももう少し肩の力を抜いて。」

「はぁ…。」

 一人戸惑い気味の布都彦に風早はやわらかい微笑を見せた。

 仲間とこうしてゆったり湯につかる。

 こんなことはこれから先、どんどんなくなっていくに違いない。

 平和な時は楽しめるうちに楽しんでおいた方がいい。

 一人緊張している布都彦以外の面々がそんなことを思っている間に一瞬の沈黙ができた。

 そしてその沈黙の中に、誰の耳も反応せずにはいられない声が聞こえてきた。



『いやー、こりゃ極楽だねぇ。』

『そうだねぇ。』



 隣から漏れ聞こえてきたのはかすれたような年配の女性の声と、その声に応じる朗らかな小鳥のさえずりのような声だった。

 後者が聞こえた瞬間、男達の間に微妙な緊張が走った。

 朗らかで優しい若い女性のその声は聞き間違えるはずもない、千尋のものだ。

 もう一つの声の主のことは想像しないことにして、男達の耳はふと流れ込んできた美しい声に耳を澄ませた。



『それにしても千尋は肌が白いねぇ。』

『そう?』

『ああ、昔の私とおんなじだ。』



(いや、それはないだろう)

 男達はいっせいに心の中でそうつぶやいていた。

 千尋は確かに色が白いし肌も綺麗だ。

 が、岩長姫の肌が何十年前であってもその千尋と同じ美しさだったとは到底思えない。



『じゃあ、私もいつか頑張って修行したら岩長姫みたいになれるかな?』

『修行したら、の話だね。まあ、あんたはそんな修行する必要なんかないさ。それより…』

『それより?』

『女を磨いた方がいいね。』

『どうして?』

『腕じゃなくて女を磨いて自分を支えてくれるいい男を釣る方が女にとっちゃ幸せってもんさ。特にあんたは全てが終わった後、中つ国を背負って立たなきゃならないんだからね。』

『そう、かな……。』



 二人の会話に男達もいっせいに小さく溜め息をついた。

 岩長姫の言っていることはたぶん正しい。

 千尋はきっとこの戦いに勝つだろう。

 そうしたら次は中つ国をどう治めていくかが問題になる。

 女王となるのはもちろん千尋しかありえない。

 となれば、千尋は国を治めることを考えながら跡継ぎも得なくてはならないのだ。

 良い伴侶を得るのは必須事項になるだろう。

 それがたとえ千尋の望む状況ではなかったとしても、間違いなくそうなる。

 男達はそんなことまで考えてそれぞれに表情を暗くした。



『女磨きもそんなに必要じゃないかもしれないがね。』

『どうして?』

『そりゃあんた、もういい体してるじゃないか。』

『へ…』



 瞬時に男達は息を飲んだ。

 岩長姫が言うところのいい体を思わず想像してしまったからだ。

 ついさっきまで千尋の背に乗る思い未来に思いを馳せていたはずの一同は一瞬でその脳裏に白く輝く肢体を想像してしまったのだった。



『ほら、腰なんかなかなかいいくびれだよ。』

『そ、それはほら、色々修行してるし、戦いもけっこうな運動量だし…。』

『足なんかも小鹿のようじゃないか。』

『それも運動してるから。』

『それに何よりその胸さね。』

『む、胸?!』



 ごくりと音が聞こえるほど男達はいっせいに生唾を飲み込んだ。

 それでなくても千尋の白い肢体を想像していたところに胸の話だ。

 当然のようにその胸も想像してしまったことは言うまでもない。



『私、胸はあんまり自信が…。』

『なーに言ってんだい。立派なもんさ、それだけ大きさがあれば十分だ。それにほれ、すべすべしてて手触りもいい。』

『そうかな…。』

『自信持ちな、夫になる男はさぞかし幸せだろう。』



 すべすべしてて手触りがいい?

 それは岩長姫が千尋の胸に触っているということか?

 男達はいっせいにそう考えて身じろぎした。

 その動きのせいで湯が波立って小さな音をたてる。

 小さくはあったけれど久々に耳の近くで鳴った音に男達はハッとは我に返った。

 我に返ってみると自分以外の仲間達の様子が気になって、互いに辺りを見回して…

 そして慌てて視線を反らした。

 誰もが自分の想像していたことを考えると、まじまじと仲間の目を見ることができなかったからだ。

 そんな中で一番最初に立ち直ったのは風早だった。

「あまり長くつかっているのもなんですから、そろそろ上がりましょうか。」

「……。」

 声をかけた風早に視線を反らす者はいても応じる者は皆無。

 風早は困ったような苦笑を浮かべた。

 なんだか一気におかしな雰囲気になってしまった。

 けれど、このまま黙ってつかっていては絶対にのぼせて倒れる者が出ることは間違いない。

「えっと…どうしましょうかね、これは。」

「風早、察してやりましょう。男にはどうしても自分で制御できないものというものがあるのですよ。」

「偉そうに言うな、お前もだろうが。」

 涼しい顔で発言する柊に不機嫌そうに突っ込んだのはアシュヴィンだ。

 その言葉にサザキ辺りは大きくうなずいている。

「私はともかく忍人もというのは意外です。」

「自分のことを棚に上げるな。」

「そ、そうなのですか?」

「布都彦…。」

 柊が忍人に話を振ったものだから、場の空気は更におかしな方向へと流れ始め…

 とその時、ガラリと扉の開く音がして一同の視線がいっせいに入り口の方へと向けられた。

 そこにいたのは…

「ほらごらん、男なんてみんなこんなもんさ。気をつけるんだよ、千尋。」

 腕を組んでどうだといわんばかりに仁王立ちしている岩長姫。

 そしてその後ろにはおろおろしている千尋の姿があった。

 もちろん、裸などではなく、二人ともしっかり服を着こんでいつも通りの姿だ。

「先生…。」

 呆れたようにつぶやいたのは風早だけだった。

 他の面々は千尋どころか岩長姫とも目を合わせることさえできなかった。

「こ、こんなもんって…岩長姫…。」

「忍人くらいはもうちょっと節操があるかと思ってたけどね。まったく、だらしがないったらないよ。」

「えっと、忍人さんはそんなことは…。」

 助け舟を出したつもりの千尋の言葉に忍人の反応はゼロ。

 そこからアシュヴィン、サザキ、布都彦と眺めてみたけれど、誰も反応は同じで視線を反らしたままだ。

「那岐は違う、よね?」

「これでも俺は千尋と同じ年の健全な男子高校生なんだけど?」

 那岐に話を振ってみれば逆ギレしたような答えが返ってきて千尋は何も言えなくなってしまった。

「まぁ、千尋が魅力的だっていうことです。許してあげてください。」

「あげてくださいって風早、あんたはそこから正々堂々とやましいことは考えませんでしたって顔で出てこられるのかい?」

「やましいことは考えてましたが正々堂々と出ることはできますよ。悪いのは俺じゃなく、千尋が魅力的過ぎるのがいけないんですから。あと、全裸なのでこのまま出ると千尋の教育に悪いかと。」

「あんたは…。」

 これは一枚上手かと岩長姫が呆れて首を横に振ると千尋は苦笑しながら黙って動かない遠夜へと視線を移した。

「遠夜、大丈夫?」

 千尋を介さなければ仲間達を言葉を交わす術を持たない遠夜は居場所がなかったのではないかと心配して声をかけてみれば、遠夜はすぐにまっすぐ千尋を見つめた。

 すると、みるみるうちに千尋の顔が赤くなって、そのまま千尋は口をパクパクさせ始めた。

「と、遠夜!恥ずかしいから!」

 いきなりそう叫んで千尋は走り出した。

 岩長姫さえも止める間もなく脱兎のごとく去って行く千尋の背をぽかんと見つめた一同は、その視線をそのままゆっくり遠夜へ向けた。

(こいつ、何言ったんだ?)

 誰もが胸の中でそうつぶやく中、遠夜は自分に向けられた視線に小首を傾げた。

 後で千尋に何を言われたのか聞くべきか聞かずにおくべきか…

 一同はしばらく悶々と考え続けたのだった。








管理人のひとりごと

お待たせ致しました!リクエストいただきました作品でございます!
管理人にしては珍しく、ギャグっぽい展開になったかなと思われます(^^)
楽しかったです(笑)
前回頂いたリクエストが殿下が主役だったので、今回は殿下にはあまり前に出ないで頂いて…(笑)
オチは遠夜にお願いしました。
遠夜が千尋に何を言ったのかはご想像にお任せします(w
風早が居直ってるのは神様だからね!(マテ
サザキとか実は意外と純情なのでこういう時は軽口叩けませんってのは伝わったろうか…(’’)
何はともあれ、なんとか完成いたしました、ケイ様、お楽しみ頂けましたでしょうか。
読んでくださった全ての皆様にもお楽しみ頂けていれば幸いですm(_ _)m








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