
遠夜はフラフラとまるで幽鬼のような足取りで歩いていた。
しかもたった一人で。
行き過ぎる官人達は驚きの眼差しで遠夜を見送る。
いつもは必ず千尋の後をついて歩いている遠夜が一人で歩いているので皆驚いているのだ。
対して遠夜はうつむいたまま今にも世界が終わりそうな暗い顔で表へ出た。
「遠夜?」
表へ出てすぐに声を駆けてきたのは風早だった。
他の皆と同じようにその顔には驚きの表情が浮かんでいる。
「一人なんですか?」
「少しだけ、神子から離れた。」
「それはまたどうして…。」
「前に、那岐にすとーかーのようだと言われた。何か悪い音だった。」
「また那岐は…。」
と苦笑する風早。
「オレが神子といつも共に在ると、オレはすとーかーで、神子に悪いものになる、だから少しだけ離れた。」
「ああ、那岐はそんなつもりで言ったんじゃありませんよ。」
「……神子に悪くなることをオレはしたくないから…。」
「参ったな。ストーカーというのは姫が育った異世界の言葉で、まぁ、相手に悪い影響を与える好意を持った者のことを言うんですけどって、わかりづらいなぁ…。」
どうやって説明したものかと風早は頭をかいた。
この世界でストーカーがどういうものかを説明するのは少々骨が折れる。
でも、目の前でうなだれている遠夜はとても放ってはおけない。
「遠夜は姫から離れたくないんですよね?」
「それは…もちろん、神子はオレのワギモだから…。」
「だったら、姫に聞いてみたらいいですよ、いつも一緒にいたらいやなのかと。」
「それは…。」
「嫌じゃないに決まってるでしょ!もう、遠夜は、気にしなくていいっていったのに!」
風早が困り果てているところへ現れたのは千尋だ。
「急にいなくなるから探しちゃったよ!私は遠夜がいつも一緒だと嬉しいの!だからいつも一緒にいても遠夜はストーカーなんかじゃないの!気にしないでずっと一緒にいて!」
「神子…。」
今まで世界が終わるかというほど落ち込んでいた遠夜はその顔にぱっと笑顔を見せた。
「さ、部屋に戻ろう。風早、那岐にお説教しておいて!」
「ははは、わかりました。」
苦笑する風早に見送られて、遠夜は歩き出す。
その手は千尋に引かれて、向かうは千尋の部屋。
その顔には幸せそうな微笑が浮かんでいた。
管理人のひとりごと
むしろ説明に困る風早先生の話な気がしないこともない(爆)
遠夜は歌を歌ったり小さな神の声を聞いたりしていたので、言葉に宿っている音に敏感そうだなって思いまして。
そういう感覚は人になってからも残ってそう。
口数は少なくても常にてとてとと千尋の後をついて歩く、そんな遠夜が大好きです(w
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