薄紅の
 千尋はニコニコと機嫌良さそうに微笑みながら、膝の上を見つめていた。

 ここへやってきたのはもう一時間ほど前のこと。

 頭上には散り際の桜が風もないのにひらひらと薄紅の花びらを降らせている。

 そして千尋の膝の上には大切な人の安らかな寝顔があった。

 花見をしようと言い出したのは忍人の方。

 二つ返事で了解して、一緒にここへやってきて…

 いつも仕事に追われている忍人の体が心配で、千尋が膝を差し出せば、忍人は苦笑しながらもその膝の上に頭をのせてくれた。

 穏やかな春の陽射しの下で千尋の膝枕に微笑んでいた忍人は、千尋が勧めるままに目を閉じて、今は静かな寝息をたてている。

 千尋は自分の膝の上で安心して眠ってくれる恋人の寝顔を幸せいっぱいな気分で眺めているところというわけだ。

 忍人がこんなに無防備なことも珍しくて、千尋は自分のそばだから安心してくれるのかと思えば嬉しくてしかたがない。

 いつまででもこうしていたい。

 千尋がそう思っても、その通りになるはずもなく、一陣の風が吹くのと同時に忍人の目がゆっくり開いた。

 浅い眠りから覚めた忍人の目に飛び込んできたのは、満開の薄紅の花を背景に幸せそうに微笑む恋人の顔だった。

 自分は夢を見ているのかと一度疑ってから、忍人は頭の下にある温もりにこれは現実だと悟って、自然とその口元に笑みを灯した。

「すまない、俺は眠っていたのだな。」

「ほんのちょっとの間ですから。もうちょっとゆっくり眠っていてほしかったです。」

「いや、せっかくの君との時間を眠りに費やしてしまうわけにはいかない。それでなくともこうして共に過ごす時はあまりつくれない。」

 そう言って忍人はゆっくり起き上がると千尋に苦笑を見せた。

 忍人の言うことは最もで、将軍として今も忙しい忍人と、女王として忙しい千尋とではこんなふうに二人で過ごす時間はなかなかとることができない。

 食事だって一緒にできないことの方が多いくらいだ。

 だからこそ、と、忍人は千尋の小さな体を引き寄せると、軽々と自分の膝の上に抱き上げてしまった。

「お、忍人さん?!」

「今度は君がくつろぐ番だ。君だって忙しいのは変わらないだろう?」

「それはそうですけど…。」

「俺はもうずいぶんと休ませてもらった。だから今度は君が眠ってくれ。」

「ね、眠るんですか?」

 この状態で?と千尋が言う前に忍人は微笑みながら深くうなずいた。

「さあ、目を閉じるんだ。君もさっきは俺にそう勧めただろう?」

「はい…。」

 お返しだと言わんばかりに抱き寄せられて、千尋は忍人の肩に頭をもたげるとそっと目を閉じた。

 体のあちこちから伝わる愛しい人のぬくもりはドキドキするけれど、どこか安心でもあって…

 千尋はすぐに眠りへと落ちて行った。

 そして忍人は、静かな眠りを守りながら、愛しいその人の髪に落ちる薄紅の花びらをそっと静かに取り除いた。






管理人のひとりごと

桜といえば忍人さん!ということで、ただひたすら桜と忍人さんを書いてみました(’’)
他には何も考えず、風景っぽい感じで…
結局二人ともなんとなく寝てるのは管理人が眠いからです(゚Д゚|||)
春眠暁を覚えずってやつです…









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