
「か、風早、ちょっと恥ずかしい。」
「俺のやりたいようにしていいと言ったのは千尋ですよ。」
「それはそうなんだけど…これが風早のしたいこと?」
「はい。」
即答されてはどうしようもなくて、千尋は苦笑を浮かべて小さなため息をついた。
そんな千尋が今どんな状態かと言うと、風早に横抱きに抱きかかえられて移動している最中だ。
事は今朝、風早がこれでも色々と我慢をしているんだと宣言したことに始まる。
千尋とは公認の仲ではあるものの、だからといって夫婦ではない。
だからこれでも男として一応我慢していることだってあるのだというのが風早の主張。
それなら、たまにはそんなに我慢しないでやりたいようにやってみてほしいと千尋が申し出てしまったのが全てのきっかけで…
千尋は抱きかかえられたまま、廊下を静かに移動中だ。
「小さい千尋をこうして抱いて運ぶのが俺にとっては何より幸福な時間だったものです。大人になるとなかなかできませんから。」
「小さいって……男として我慢してるとかいうからてっきり…。」
「てっきり、なんですか?」
「……もうちょっと恋人らしいことを我慢してるのかなって思ったのに…。」
どうやら少し期待外れでむくれているらしい千尋にくすっと笑みを漏らして、風早はその足で良く晴れた空の下へと歩み出た。
「確かにそっちも我慢はしてますが、それを俺の思うようになんでもしてしまうと千尋が、ね。」
「私が、なに?」
「どうなるかはちょっと保障できませんが。」
「へ……ちょっ、何?何が?」
急に顔を赤くしてバタバタと暴れ始める千尋をなんなく抱きしめて、風早は平然と歩みを進める。
これは強制連行?
と千尋がドキドキしていると、人気のない大きな木の下で千尋の体は解放された。
「どんな想像したのか気になりますが、冗談ですよ。」
「冗談……風早っ!」
からかうなんてひどいと抗議しようとした刹那、千尋は風早の艶やかな瞳にとらえられた。
ハッと息を飲んだ次の瞬間には優しい口づけで唇をふさがれて、抗議の言葉は出てこない。
「これくらいは許してもらえますか?」
唇が離れてそう問われて、千尋は赤い顔で風早に抱きついた。
「……もちろん。」
腕の中で聞こえる小さな答えに風早は満面の笑みを浮かべた。
この世のどんな人間もこんな微笑を浮かべることはできないだろうと言うほど幸せそうな微笑をけれど、千尋は見ることができなかった。
その微笑を引き出した千尋自身も風早の腕の中でまっかに頬を染めながら幸せに浸って目を閉じていたから。
管理人のひとりごと
風早父さん何をしようとしてたの(゚Д゚|||)
とかハラハラしてもらえれば(w
でもやらかすのはせいぜいこれくらい、それが父さん(’’)
ブラウザを閉じてお戻りください