
「まだ起きていたのか。」
千尋が一人、寝台に腰かけて窓の外に浮かぶ月を眺めていると、アシュヴィンがやってきて隣に座った。
時は夜更け。
千尋は寝間着姿だけれど、アシュヴィンはついさっきまで仕事をしていたことがよくわかるいつもの姿のままだった。
「仕事、終わったの?」
「ああ、だから寝室に戻ってこれたんだ。先に眠っていてよかったんだぞ?俺が恋しくて眠れなかったと言ってくれるならやぶさかではないがな。」
いつものようにからかいを含んだ言葉になんとなく力がなくて、千尋は隣に座るアシュヴィンの顔をじっと見つめた。
すると、あっという間にアシュヴィンの顔に苦笑が浮かんだ。
これは、どうやらそうとう疲れているらしい。
「アシュヴィン、大丈夫?」
「ん?ああ、お前に心配されるほどのことじゃないさ。鬱陶しい会議が続いてうんざりしてはいるがな。」
そう言ってアシュヴィンはため息をついた。
千尋の前で疲れたようにため息をつくことなどめったにないアシュヴィンだ。
これは一大事とばかりに千尋はすぐに立ち上がると、アシュヴィンの背後へと回った。
「千尋?」
アシュヴィンが戸惑っている間に千尋の小さな手はアシュヴィンの肩に乗せられて、その手を取ろうとアシュヴィンが自分の手を持ち上げた刹那、千尋はぐいぐいとアシュヴィンの肩をもみ始めた。
「おい、何をしている?」
「何って肩もみ。」
「……。」
「疲れた時はこれが一番だから。」
そう言いながら千尋は張り切って肩もみを続けている。
アシュヴィンとしてみれば、確かに肩のこる会議でもあったわけで、愛しい妻に肩をもんでもらうのは別に嫌ではない。
嫌ではないけれど、味気ないとも思ってしまう。
「肩もみとは、俺はまるで父親か祖父のようだな。」
「そう?」
「ああ、妻が夫にするならこうだ。」
アシュヴィンはそう言いながら千尋の両手を肩越しに自分の方へと引いた。
すると自然と千尋の体がぽすっとアシュヴィンの背にもたれかかる形になる。
千尋はむくれた様な顔で、それでもアシュヴィンの左肩に顎を乗せたまま引き寄せられた腕を鍛えられた首に回した。
「これでいい?」
「まぁまぁ、だな。できればそこから口づけの一つでもくれると更に良い。」
「わがままなんだから。」
むくれてそうは言うものの、千尋はチュッとアシュヴィンの頬に可愛らしいキスをした。
これで大切な人の疲れが少しでもとれるなら、何度だって…
そう思っていた千尋はあっという間に振り返ったアシュヴィンに押し倒されて、いつの間にか熱っぽい口づけが千尋の唇に贈られていた。
管理人のひとりごと
いや、管理人が肩凝っているって、それだけのことです(’’)
千尋ちゃんの手にもまれたら気持ちよさそうだなぁと思って。
もちろんアシュヴィンは肩もみなんかじゃ納得しないわけですが!
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