
千尋は手にしていた竹簡を置いて窓の外を眺めた。
木々の葉が色づいてすっかり外は秋の装いだ。
「千尋?疲れましたか?」
千尋の視線にいち早く気付いたのは風早だった。
いつものように千尋の仕事を手伝っていた風早は、千尋の表情の変化に敏感に反応する。
そんな風早に千尋は微笑を浮かべて見せた。
「違うの、紅葉が綺麗だなと思って。」
「ああ。」
言われて外へと目をやれば、秋色に変わった風景が風早の目に飛び込んできた。
うっとりと外を眺める千尋と外の風景とを見比べて、風早はおもむろに立ち上がった。
「風早?」
「紅葉狩り、行きましょう。」
「でも……。」
「仕事なら後は明日でも大丈夫ですよ、ね。」
穏やかな風早の笑顔に押し切られ、千尋は風早と共に外へ出た。
天気も良くて紅葉も綺麗で、千尋の顔には笑みが自然と浮かんだ。
風早と二人、並んで歩く木々の下は美しく色付いた葉がひらひらと舞っている。
「綺麗だね。」
「少し遅かったですね。」
「そう?」
「ええ、もうだいぶ散ってしまっているでしょう?」
「でも、降ってくるのも凄く綺麗。」
もう少し早い時期に連れ出すのだったと悔やむ風早に千尋は笑みを返す。
けれど、風早の静んだ表情はなかなか明るくなってはくれなくて…
「風早?私は凄く楽しいけど…。」
「いえ、少し寒いような気も…。」
景色だけではなく、風早が気にしていたのは気温だった。
木々の葉が色づいて落ちているということはそれだけ気温も下がっているということ。
風早は足を止めると考え込むようにうつむいた。
「風早、私なら大丈夫だからそんなに心配しないで。」
今度は千尋が慌てて風早に歩み寄ると、長身の恋人を見上げた。
すると何かに気付いたようにはっと目を上げた風早は次の瞬間にはふわりと微笑んで千尋をそっと抱きしめた。
「へ?風早?」
「こうしていれば寒くないでしょう?」
「それは…うん……そうだね。」
このままじゃ紅葉が見えないという抗議は飲み込んで、千尋は風早の腕の中でおとなしく目を閉じた。
愛しい人の腕の中の温かさはとても簡単に手放せるものではなかったから。
管理人のひとりごと
そりゃ景色も気になりますが、大事な姫の体調管理が一番の風早です!
ついでにおいしいところも持っていきます!
管理人が生息している地は寒いので、紅葉を見る時は防寒具が欠かせません…
ので、今回風早父さんには暖房になって頂く方向です(’’)
ブラウザを閉じてお戻りください