
昼、軽く食事をとった後、うたた寝をしてしまったのは確かに自分が悪かった。
けれど、だからといってどうしてこんな状況になっているのか、千尋は顔を赤くして昼食後から今までのことを思い出してみた。
お腹がいっぱいになったらなんだか眠気が襲ってきて、椅子に座ったままうたた寝をしてしまった。
当然、食事を一緒にとっていた風早にその様子を発見されて、うたた寝などしていると風邪をひくと注意をされた。
それでも眠気を払うことができなくて、風早に返事はしても体を起こすことができなかった千尋は風早にあっという間に抱き上げられて寝台へと連行された。
午後も仕事があるのにと抗議しても、今度は少し眠るようにと言い渡されて起きることを許してもらえなかった。
風早にしてみれば千尋がそんなにも疲れているなら休ませなければと思ったのだろう。
それはわかっている。
問題はその次だった。
陽が少し傾き出して、部屋の中が肌寒く感じると言い出した風早はすっと千尋の隣に体を横たえて添い寝を始めたのだ。
子供の頃じゃあるまいしと千尋が慌てて抗議すると、風邪をひかせたくないのでと爽やかかつ至近距離の笑顔でこたえられてしまった。
おかげでそれ以上抗議することができずに、千尋は後ろから風早に抱きかかえられる形で寝台の上に横になっていた。
そんな状況で眠れるはずなんてなくて、千尋はずっと背中に感じる優しいぬくもりに神経を集中させながら赤い顔で目をパチパチさせていた。
「千尋、眠れないんですか?やっぱり寒いですか?」
「さ、寒くないけど…眠れないよ、こんなんじゃ…。」
「こんなって俺がいると、ですか?」
「いるとっていうか…。」
密着してるからとは言えなくて、千尋は首まで赤くなりながら黙り込んだ。
その様子にくすっと風早が笑みを漏らす声が千尋の耳に届いた。
「風早?」
「いえ、ちょっと嬉しいかなと思ったもので。」
「嬉しい、の?」
「ええ、昔はこうしてると俺に抱きついて安心して眠ってくれたものですが…。」
「それは子供の、小さい頃のことでしょ!」
「はい、ですから、緊張して眠れないと言ってもらえるのは少し嬉しいかなと思ったんです。」
そう言って風早は更にきつく千尋を抱きしめると、その小さな耳元に口を寄せた。
「俺を男だと思ってくれているということですから。」
囁くような小さな声でそう言われて、千尋はこんどこそがばっと勢いよく起き上がった。
これ以上は一瞬だって添い寝なんかしていられない。
「そ、そんなのもうずっと前から思ってるから!」
少し怒ったようにそう言うと、風早は千尋を見上げて目を細めると、自分もゆっくり上半身を起こして千尋を優しく抱きしめた。
「それも嬉しい言葉ですが…眠ってもらえないというのも寂しいものですね。」
「もぅ、風早、それ、わがまま。どっちかしか無理だよ。」
可愛らしく困ったように口ごもる千尋を強く抱きしめて風早はその顔に絶え間なく微笑を浮かべるのだった。
たとえば父親や兄に向けるような愛情も、恋人や夫に向けるような愛情も、その全てを自分に向けてもらえているようで…
風早はこれ以上ないほどの幸福を腕の中に感じていた。
管理人のひとりごと
よしよしって感じで風早父さんは添い寝してます。
下心はないですよ(笑)
これが殿下なら間違いなく下心の塊!
今回は小さい頃から今に至るまで愛情独り占めで喜ぶ父さんの図でした(^^)