
「ねえ、アシュヴィン。」
「ん?」
「そろそろ離してほしいんだけど…。」
「断る。」
千尋は赤い顔で懇願してみたけれど、案の定、その望みは聞き入れてはもらえなかった。
そんな千尋が今どんな状態にあるかといえば…
アシュヴィンの膝の上に乗せられて、その片腕ががっしりと千尋の腰のあたりを抱いていた。
そんな状態でアシュヴィンは空いているもう一方の手で竹簡を広げてその内容に目を通していた。
つまり、仕事をしている最中だというのに、アシュヴィンは膝の上に千尋を拘束したままというわけだ。
「でもね、こんな状態じゃ仕事しづらいでしょう?」
「俺はかまわん。」
どんなに千尋が色々と言ってみても腰を抱くアシュヴィンの腕の力がゆるむことはない。
視線は竹簡を見つめたままなのに、千尋を掻き抱く手からは力を抜かないのだ。
「アシュヴィン、これじゃ私が何もできないんだけど…。」
「お前が今すぐしなくちゃならなん事など何もないだろう?」
「そ、それはそうだけど…。」
なんだかんだと言い続ける千尋にアシュヴィンは深いため息をついた。
とうとう竹簡を眺めていた目がギロリと千鶴を睨み付ける。
「な、何?」
「お前は俺の膝の上が不満なのか?」
「不満っていうか…恥ずかしいって言うか…。」
「俺の奥方が俺の膝の上にいて何が恥ずかしい?」
「恥ずかしいの!普通は!それに…仕事は仕事で集中した方がいいと思う。」
もごもごと千尋が不満気にそう口にすると、アシュヴィンはさっと開いていた竹簡を閉じてしまった。
そして今までは片腕で抱いていた千尋の腰を両腕でしっかりと抱きしめる。
「ちょっ、何して…。」
「仕事かお前かどちらかに集中しろというのならお前に集中する。」
「はい?」
「だから、俺は仕事じゃなくてお前に集中することにした。」
「し、仕事はどうするの!」
「知らん。お前がさせないのが悪い。」
「悪くない!アシュヴィンが仕事に集中すればいいの!」
「お前が膝の上にいなければ集中できん。」
「もぅっ!」
自分の体を抱きしめてうっとりと目を閉じるアシュヴィンを見てしまってはもう千尋に抵抗することなんてできるはずもなく…
千尋はおとなしくアシュヴィンの膝の上で顔を赤くした。
アシュヴィンが呆れる千尋を膝の上に乗せたまま仕事を再開するのは、リブが竹簡を取りにやってきて深いため息をついてからのことだった。
管理人のひとりごと
仕事が忙しくて忙しくてもう…
ってなった殿下がキレてこうなったと(^▽^)
仕事もおろそかにはしないだろうからなぁ、殿下は。
となれば、どっちもとる!
ってなって犠牲になるのは千尋ちゃんでしたとさ(’’)