俺のお妃様
 アシュヴィンは珍しく視察からかなり早く戻ってきた。

 まだ陽は遙か頭上に輝いている。

 この時間に戻れば新妻もきっと許してくれるはずだ。

 少なくても心配はかけなかったはず。

 そう思ってうなずきながらアシュヴィンは妻がいるはずの部屋の扉を開けた。

 ところが、笑顔で迎えてくれると期待した新妻の姿はそこにはなくて…

「早く帰ったら帰ったで…。」

「や、陛下、もうお戻りですか。」

「ちょうどいいところへ来た、リブ、妃はどこだ?」

「姫様なら少し散歩をしてくると先ほど出て行かれましたが…。」

「わかった。」

 アシュヴィンはあきれたように溜め息をついて歩き出す。

 散歩というからにはおそらく木漏れ日の気持ちいい場所辺りが狙いめか。

 そんなことを考えて、明るい陽の下をゆっくりと妻の姿を探しながら歩いてみる。

 せっかくこれからゆっくり妻との時間を楽しもうと思っていたというのに…

 見つけ出したら恨み言の一つも言ってやろうか。

 そう思っていたアシュヴィンはその妻の姿を見つけて深い溜め息をついた。

 アシュヴィンの妻、千尋はというと一本の大木の根元に座ってうつらうつらと午睡を楽しんでいたのだ。

 辺りに人の気配はないが、従者も伴わずにこんなところで一人で午睡とは…

 あきれ果てて溜め息をつきながらアシュヴィンが歩み寄っても千尋が目覚める気配はない。

「あきれたものだな。」

 少しばかり不機嫌そうな顔でそう言って千尋を起こそうとその傍らに膝をついて…

 覗き込んだ新妻の寝顔はあまりにも気持ちよさそうで。

「アシュヴィン…。」

 寝言で自分の名前を呼ばれてしまってはもうアシュヴィンにこの愛らしい新妻を起こすことなどできなくて…

 隣に寄り添って座れば今度は千尋が自分に寄りかかって気持ちよさそうに微笑んだものだ…

「まったく、この妃は…。」

 そうは言いながらもアシュヴィンの顔には笑みが浮かぶ。

 せっかく愛しい妻との語らいの一時を楽しもうと思っていたが、ここはこうして妻の眠りを守ってたたずむのも悪くない。

 アシュヴィンは妻のやわらかい金の髪を優しく一撫でして、今はこの妻の眠りの番人になろうと決めたのだった。





管理人のひとりごと

管理人の中ではアシュはけっこうわがままプーなイメージですが…
たまには優しいアシュヴィンを書こうかなと。
いや、アシュヴィンが普段から優しくないって言ってるんじゃないですよ(’’)
実は政略結婚設定とかあって甘くなりそうな殿下ですが、政略結婚、そう、政略なだけにそうでもなく…
でも、アシュヴィンは千尋が好きだったんだよっていうこう優しい感じがほしかったんです(’’)






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