後ろから

 千尋は窓の外をじっと眺めていた。

 視線の先には真っ赤な夕陽。

 山際に沈み行く赤い光の球を見ていると、昔は何故か焦りを感じたものだったけれど…

 と、甦った記憶をたどったりなどしていた。

 すると、ふわりと背にやわらかなぬくもりを感じ、次の瞬間、後ろから長い腕に囲われてしまった。

「風早?」

 腕の主はわかっている。

 ついさっきまで仕事を手伝ってくれていた恋人だ。

「何をそんなに熱心に見つめていたんです?」

「夕陽、綺麗だなと思って。」

「ああ、確かに綺麗ですね。」

 そう言って風早は千尋を囲う腕に力を込めた。

「でも、そんなふうに熱っぽい瞳で千尋に見つめられるなんて少し妬けるかな。」

「妬けるって夕陽に?」

「ええ。」

 間髪入れない風早の返答に千尋が慌てて振り返った。

 見上げた風早の顔はなんだかすごく真剣に見えて、千尋は何も言えなくなってしまった。

「どうかしましたか?」

「…夕陽に妬くなんておかしいよ。」

「そうですか?俺は千尋が一生懸命見つめる全てのものに妬いてるんですが…。」

「なっ…そんなになんにでも妬かないで、私が何よりも誰よりも一番大好きなのは風早なんだから…。」

 真っ赤な顔で言う千尋に目を細めて、風早はやわらかな金の髪を優しくなでた。

「では、俺が妬かなくてもすむようにしてくれますか?」

「へ?」

 千尋が見上げた風早は甘くて、それでいてどこかいたずらめいた顔をしていて…

 千尋は少しだけ拗ねた顔をしてから風早の肩に手をかけて背伸びをした。

「もぅっ。」

 小さな声でそう言って風早の唇に自分のそれを軽く重ねてすぐに離す。

「これでいい?」

「はい、有難うございます。」

 千尋の耳元で囁かれたその声は、幸せに満ちていた。





管理人のひとりごと

たまに風早を書くと最近甘くなっていく気がします…
お父さんより恋人色が濃くなってきたなぁと思う今日この頃。
お父さんな風早も大好きなんですが、やっぱり甘くしてあげたい親心(マテ







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