
「アシュヴィン。」
アシュヴィンが執務室で一人、竹簡を睨んでいると、控えめな声に呼ばれて視線を上げた。
声の主はアシュヴィンの妻、千尋だ。
扉越しに愛らしく顔を出しているその姿に思わずアシュヴィンの口元がほころんだ。
「どうした?」
「お茶、いれに来たんだけど…今いい?」
「ああ。」
アシュヴィンが許可すれば、嬉しそうに中へ入った千尋はすぐ備え付けられている茶器でお茶をいれ始めた。
その様子を黙って愛しそうに見守っていたアシュヴィンは、千尋から茶を受け取ってから口を開いた。
「わざわざ茶をいれに来たのか?」
「アシュヴィン、働きづめだから疲れてるかなぁと思って。」
頬を桜色に染めながらそう言う千尋を見てしまっては、アシュヴィンが黙っていられるはずもなく…
茶の入った器を机の上に置いたアシュヴィンの手は、そのまま千尋へと伸びた。
伸ばされたアシュヴィンの手が千尋の手首を掴んで引き寄せる。
すると千尋の体はアシュヴィンの膝の上におさまった。
「アシュヴィン…仕事が…。」
いつもよりはおとなしく控えめにそう言う千尋の顔が真っ赤になっているのを見て、アシュヴィンの顔には楽しそうな笑みが浮かぶ。
「今日はやけにしおらしいな。」
「私は…アシュヴィンの疲れがとれるなら別に…でも仕事が…。」
「仕事はいい、後でいくらでも取り返す。」
そう言ってアシュヴィンは恥らう千尋に口づけた。
「ちょっ、アシュヴィン、仕事中でしょ?」
「仕事はいつでもできる。奥方殿の機嫌がいいうちに愛でておかねばな。」
「機嫌のいいうちって…。」
千尋はきりっと表情を引き締めると、ひょいとアシュヴィンの膝から飛び降りた。
「千尋…。」
「私は別に機嫌に左右されてるわけじゃないから。アシュヴィンに疲れを取ってもらいたいと思っただけ。もう疲れもとれたみたいだから、私も仕事に戻るから。」
口早にそう言うと千尋はスタスタと部屋を出て行ってしまった。
アシュヴィンは苦笑しながら一つ溜め息をつくと、千尋がいれてくれた茶を手に取った。
「まったく、俺の奥方殿は扱いが難しい。」
そう言って茶を口に運ぶアシュヴィンの顔は、どこか幸せそうだった。
管理人のひとりごと
やっぱり新妻を怒らせちゃう、それが殿下(笑)
でも、自分のことを気遣ってもらってちょっとウキウキ、それも殿下(爆)
この後は結局、一生懸命ご機嫌取りをして許してもらいます(’’)
まぁ、常世夫婦はいつもこんな感じで(w
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