遠夜はゆっくり目を開けた。
するとすぐに見えたのは陽の光が射し込む窓だった。
嫌な夢を見て目を開けて、その目に光が飛び込んできたものだから遠夜は目を細めて顔をしかめた。
夢で見ていたのは過去の自分の記憶。
ワギモを失う悲しい夢だ。
千尋を手に入れた今でも遠夜は時々同じ夢を見る。
今も千尋の政務が終わるのを待っているうちにうたた寝をしていて、その夢を見たのだった。
手にも背にも、じっとりと嫌な汗をかいている。
遠夜は小さく溜め息をついて立ち上がった。
千尋はまだだろうか。
政務が片付いたらその後は共に過ごそうと約束してくれたのだが、その政務がなかなか終わらない。
愛しくて愛しくて…
寂しくて切なくて…
遠夜が千尋の部屋の前まで行って待っていようと自室の扉を開けると、そこにはキョトンとした顔の千尋が立っていた。
「あ、驚いたぁ…急に扉が開くんだもの…。」
「神子……。」
すぐに笑顔を見せた千尋に今度は遠夜が目を見開いた。
会いたくて会いたくて恋焦がれていた人が今、目の前にいる。
そのことの方が先ほど見た夢よりも夢のようで、遠夜は千尋を見つめたまま凍りついた。
「遠夜?どうかしたの?たくさん待たせたから怒ってる?」
怒っているなんてとんでもない。
愛しくて愛しくて、ただ愛しい、それだけだ。
そう告げたくてもなかなか言葉は口をついて出てきてはくれなくて、遠夜は千尋へと手を伸ばした。
細い肩に手をかけて、優しく、でも力強く抱きしめれば初めは驚いていた千尋もすぐに遠夜の体に腕を回した。
「神子、オレのワギモ…離さない……。」
「うん、離れないよ。」
千尋がくれた言葉に遠夜の顔がほころんだ。
二度と離さない、失わない。
遠夜はそう心に誓いながら、千尋を抱きしめる腕に力をこめた。
管理人のひとりごと
遠夜は失うつらさをよく知っているので、幸せな時間を手に入れてもまだ夢に見たりとかしそう。
でも、千尋ちゃんがいてくれればすぐ幸せになれるから大丈夫♪
もともと人とのコミュニケーションが取れなかった遠夜なので、言葉がほいほい出てくるってことはなさそうです。
それよりは大胆な行動の方がお似合い(^^)
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