特製
 各地から届く報告に目を通しながら、アシュヴィンは溜め息をついた。

 皇ともなれば毎日が忙殺されることは予想していたことだ。

 だが、せっかく手に入れた妻に会う暇もないというのは予想外だった。

「クソッ。」

 口の中でそうつぶやいてみても仕事が減るわけではない。

「リブ、茶をいれてくれ。」

 竹簡からは視線を外さずにアシュヴィンがそう言うと、近くにあった気配が動いた。

「や、陛下、茶葉を切らしていました。とってきます。」

「ああ。」

 いつもなら文句の一つも言いそうなアシュヴィンだが、今は竹簡に集中しているらしい。

 リブはニコリと微笑むと静かに部屋を出て行った。

 リブがいなくなれば部屋にはアシュヴィンが一人きりだ。

 静かになった部屋でアシュヴィンは竹簡の山との格闘に集中した。

 これをさっさと片付けてしまえれば妻と食事をする時間くらいは持てるかもしれない。

 そう思えば自然とアシュヴィンの集中力は高まった。

 アシュヴィンが竹簡に目を通し続けることしばし。

 そろそろリブの帰りが遅いなとアシュヴィンが思い始めたその時、その視界に茶の入った器が置かれた。

「遅かった……な。」

 器を手にとって視線を上げて、アシュヴィンは動きを止めた。

 すぐ側に立っていたのはリブではなく、優しい笑みを浮かべた千尋だった。

「驚いた?」

「ああ、どうして…。」

「リブに色々教えてもらってね、そのお茶、私が茶葉を選んでいれたの。アシュヴィンの疲れがとれるように茶葉を考えて混ぜてみたんだけど…。」

 アシュヴィンはフッと笑って茶を口に入れると一つうなずいた。

「うまいな。リブのより薫りがやわらかい。」

「物足りなくはない?」

「ああ、大丈夫だ。」

「よかったぁ、疲れをとる薬草とかも入ってるから気に入ってくれたのならまた飲んでね。」

「毎日でも飲むさ、お前がいれてこうして持ってきてくれるのなら、な。」

「え……。」

 千尋が目を丸くしていると茶の入っている器を置いたアシュヴィンが千尋の手を握るとその手を引いた。

 勢い、千尋はアシュヴィンの膝の上へと座ることになってしまった。

「アシュヴィン!」

「そう怒るな、まだ少々仕事が残っているからな。」

「だから、こういうことしてる場合じゃ…。」

「疲れている俺を最も癒してくれるのはお前のぬくもりだぞ?知らなかったのか?」

「アシュヴィン!」

 優しく耳元で嬉しい言葉を囁かれて、千尋は真っ赤な顔でうつむきながらもアシュヴィンの膝の上でおとなしくするのだった。





管理人のひとりごと

俺を癒すなら茶なんぞじゃなくお前をくれ!と殿下は言いそう(’’)(マテ
千尋ちゃんは千尋ちゃんで色々努力してるんですが、それではたりない殿下の図(爆)
そんな二人の間を行ったり来たりして一番大変なのはリブだと思う管理人でした…









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