
千尋は小さく溜め息をついた。
溜め息の理由は目の前に座っている婚約者だ。
部下からの信頼はあつく、戦えば決して負けない常勝の将軍葛城忍人、それが千尋の婚約者の名前だ。
そしてその常勝将軍はというと、二人きりでお茶を飲んでいるこの時も何やら難しげな表情で婚約者である千尋の顔を眺めている。
さっきまでは今日一日何をしていたかをお互いに報告しながらそれでも会話らしい会話を交わしながら夕食を共にしていたのだけれど、それだって決して恋人同士の楽しいおしゃべりとは言えなかった。
食後、床に就くまでの短い一時を二人でお茶でも飲みながら楽しもうと千尋が思ってみても、こうしてお茶を手に向かい合ってみれば特に話すこともない。
こんなことなら向こうの世界にいる間にクラスメイトに彼氏とはどんな会話をするのかと聞いておくのだったと千尋が後悔してみてももう遅く…
結局、千尋はこうして溜め息をつくしかない。
プロポーズまでしてもらって、一応婚約者という関係になって、つまりは両思いでお付き合いしているはずなのだけれど、千尋が思っていたような恋人同士の甘い時間などというものはこの常勝将軍との間には成立しないらしい。
もちろん、いつも真面目で厳しくて、でもいつも自分を気遣ってくれる、そんなところが千尋も好きではあるのだけれど、ここまで今までと何も変わらない状況が続くとさすがに千尋も落ち込んだ。
「千尋?」
「はい?」
急に名前を呼ばれて驚いて、千尋の返事は少しうわずってしまった。
机をはさんで向こう側にいる忍人が訝しげに自分を見つめている事に気付いて、千尋の顔も悲しげに曇る。
「どうかしたのか?」
「何がですか?」
「様子がおかしい。」
千尋ははっと目を見開いた。
どうせこれからのこの国の将来とか軍の訓練のしかたとかそういうことを難しそうに考えているのだろうと思っていたのに、まさか自分のことを見つめていたなんて思わなかった。
「えっと、その……。」
「俺は何か君の気に障ることをしたのだろうか?」
「してませんっ!」
思わず大声で否定して、それから千尋は顔を真っ赤にしてうつむいた。
「別に忍人さんが悪いわけじゃなくて…私がわがままというか…。」
「君にわがままを言われた記憶はないが?逆に色々と気を使わせているとは思っている…。」
「そんなことないんですけど…。」
「何か不満があるのなら言ってくれ。」
「ふ、不満とかじゃなくて!その…なんというか、もうちょっとこう、恋人らしくというか婚約者らしくというか…。」
耳まで赤くしてなんとか千尋がそういうと、今度は忍人が深い溜め息をついた。
慌てて千尋が忍人を見つめる。
王のくせにこんなことを言い出すなんてあきれられただろうか?
千尋の顔色が一瞬で青くなった。
「俺は…。」
何か言おうとした忍人はそれをやめて溜め息をついて立ち上がると、怯えているような驚いているような千尋に歩み寄ってあっという間に口づけた。
「お、忍人さん?」
「あまり君を不安にさせると風早辺りに何をされるかわからないな。」
「はい?」
「すまない、言葉はあまり得意ではないんだ。」
そう言って苦笑する忍人に千尋は赤い顔で微笑んだ。
言葉は得意ではない、だから、思いは行動で伝える。
それならと千尋は自分も立ち上がると、少し背伸びして忍人に口づけた。
管理人のひとりごと
忍人さんはたぶん4の中では一番甘い言葉とか苦手そう(コラ
と、管理人が勝手に思ってこうなりました(’’)
言葉が苦手なら行動で…どっかで見た光景ですな…
でも、千尋ちゃんの場合は照れてるばかりじゃなくて自分からもリアクションします。
その辺は望美ちゃんくらい度胸も行動力もあると思うのです(^^)
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