流星の下で〜風早サイド〜
「すみません、世話になります。」

「気にするな、というより、常世へ足を伸ばして顔を見せなかったら殴るぞ。」

「あははは、そう言ってもらえる仲間がいるのは有り難いですよ。」

 アシュヴィンの前には1年ぶりに見るあの笑顔があった。

 中つ国での千尋の即位の式以来、風早の顔を見るのは1年ぶりだ。

「だいたい、俺達に挨拶もなしにふらりと姿を消すヤツがあるか。」

「すみません、急いでいたもので。」

 嘘をつけとアシュヴィンは心の中で溜め息をついた。

 だが、今のアシュヴィンにはもっと風早に話しておかなくてはならない重要なことがあった。

「風早。」

「はい?」

「お前が今常世を訪ねてくれたのはちょうどよかった。」

「?」

「話しておきたいことがある。まぁ、話さなくてもいいことなのだろうが、俺としてはお前には話しておきたい。」

「なんですか?改まって。」

「実は、中つ国と常世の良好な関係を保つという理由で俺と中つ国の王との婚姻の話が持ち上がっている。」

「……。」

「現状では話が出ているというだけだが実現不可能という話でもない。」

「でしょうね…むしろ好ましい話かもしれません…。」

「そんな言葉を聞きたいわけじゃないんだがな。」

「……俺は、賛成ですよ、アシュヴィンなら人柄もよく知ってますし…。」

「真剣に言っているか?」

「冗談でこんな話をするほど人は悪くないつもりですが。」

 そう言って苦笑する風早の顔はどこまでも悲痛で、アシュヴィンは深い溜め息をついた。

「お前の立場がわからんでもないがな、俺はお前からはもっと別の言葉を聞きたかった。」

 アシュヴィンは何故か少しいらだたしげにそういうと、すっと立ち上がって部屋を出て行ってしまった。

 風早は苦笑でアシュヴィンを見送って窓辺に立った。

 外は満天の星空、風はなし。

 静かな夜、アシュヴィンの言葉は風早の胸に突き刺さった。

 言えるものなら言っていた、千尋は誰にも渡さないと、たとえ相手がアシュヴィンであろうとも渡すものかと。

 だが、どんなに望んでもそんなことを自分が言えるはずもない。

「千尋…。」

 愛しくてならないその名を口にした刹那、大きな流れ星が一つ、白い尾を長く引いて流れた。

(願わくば、千尋が幸せでありますように)

 風早が流星に願うのは唯一つ、愛しい人の幸せだけだ。

 今の自分にはそれを祈ることしか許されないのだ。

 風早はそう己の心に言い聞かせる。

 いつの間にかその顔からいつものやわらかさが失せた風早は、ただ唇を噛んで目を閉じ、自分の今の境遇に耐えるしかできなかった。





管理人のひとりごと

千尋サイドと決定的に違ってるのは願い事です。
これは管理人、意識して書いてます。
千尋は風早に会いたい、風早のことを想っていたいって概ね自分のエゴで祈ります。
でも風早は千尋が幸せであってくれればいいって祈るんです。
ここが決定的な差であり、風早が風早である所以だと思うわけです。
結局のところ千尋が幸せになるためには風早と一緒にいなくちゃいけないので、願いがかなうと二人とも幸せになるという結果ですけどね(’’)





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