目には映らぬ
 遠夜は一人、森を歩いている。

 最近はいつも千尋と共に歩いていたのだが、今、千尋は近隣の有力者と面会中だ。

 いつものように一緒にいようとしたら柊に苦笑しながら止められてしまった。

 さすがに来客と会うのも一緒というのは問題があると柊に言われて…

 千尋に困った顔をされてはどうしても一緒にいたいとはいえなくて…

 だから千尋の側を離れて一人になったのだけれど、一人ではすることも無くてただただ千尋のことばかりが気になって仕方がないので、森まで散歩にやってきたのだ。

でも、いつも一緒の千尋が隣にいないというだけで綺麗な森もなんだか寂しく見えた。

 遠夜は一本の大きな木の根元に座ると頭上を見上げた。

 生い茂る木の葉の間からは青い空が覗いていて、とてもいい天気だ。

 風も暖かくて心地いい。

 それなのに遠夜の表情は冴えない。

 千尋は今何をしているだろうか?

 一人で何か困ってはいないだろうか?

 そんなことばかりが脳裏に浮かぶ。

 千尋には自分以外にも頼れる仲間がいるから大丈夫。

 そんなことはよくわかっている。

 わかっていても遠夜は千尋を思わずにはいられない。

 遠夜が足を止め、千尋を思いながら再び頭上を見上げたその時、ゆるやかな風が周囲の草を鳴らした。

 遠夜はハッと目を見開いて辺りを見回した。

 昔は見えていた人ではないモノ達がそこにいるような気がした。

 今ではもう姿も見えず、声も聞こえないけれど草の音は「大丈夫」と言っているような気がした。

 遠夜が今はもう目には見えない友を想って微笑したその時…

「遠夜!」

 聞こえてきた声に振り向けば、息を切らせて駆けてきた千尋が思い切り遠夜に抱きついた。

「神子…。」

「何をしていたの?」

 ひとしきり遠夜に抱きついて満足した千尋がやっとその身を離して問いかけると遠夜はニコリと微笑んだ。

「友を、想っていた。」

「そっか、見えなくても遠夜にはたくさん友達がいるんだもんね。」

 千尋がそう言って辺りを眺めれば、優しい風が草を鳴らした。

「もう少しここにいようか。」

「二人で?」

 遠夜が少しだけ不安そうな顔で千尋を見つめた。

 千尋は王として忙しい身だ、そうそう共にいられるとは思えない。

「うん、二人で。今日の仕事は全部終わったからこれからはずっと一緒にいられるの。」

「神子…。」

「遠夜に会いたいから仕事頑張ったんだから。」

 そう言って笑う千尋を遠夜は優しく抱き締めた。

「ありがとう。」

 千尋の耳元で囁かれたその声はとても優しくて甘くて、どんな歌を歌う時の遠夜の声よりも艶やかだった。






管理人のひとりごと

久々に遠夜書いた…
不安です(’’;
遠夜はそもそもが千尋ちゃんとしか会話できない状況にあったから、どうしても二人きりの話を書きがち…
でも、もっとみんなと仲良くする遠夜も書きたい気がしています。







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