
千尋は風早の帰りを待っていた。
朝早くに恐い顔をした男の人に呼び出されて「すぐに帰ります」と言い残して出て行った風早はまだ帰ってこない。
窓の外を眺めてみれば夕陽で辺りはすっかり紅に染まっている。
こんなに長い時間風早が帰ってこないことは珍しくて、千尋は少しだけ不安になった。
もちろん、風早はきっとちゃんと帰ってきてくれると信じている。
今、大声で風早を呼べばきっと飛んできてくれるとわかってる。
でもそんなことをしたらきっとわがままな子だと思われてしまうから、そんなことはしたくない。
それでも風早がいてくれないことが寂しくて寂しくて、千尋は座っていた椅子から飛び降りると扉へ向かっててとてとと駆け出した。
風早には会いたいけれどわがままな子だと思われたくはない、だったらもう迎えに行くしかない。
幼いながらにそう考えた千尋は力いっぱい重たい扉を押し開けて、心細く思いながらも部屋を出た。
風早がどこにいるかなんてわからないけれど、黙って待っているのは不安で不安で…
「姫?」
部屋を出てすぐに千尋はずっと聞きたかった声を聞いた。
見ると、部屋のすぐ前の廊下に風早が立っていた。
その顔はすっかり驚いて目を丸くしている。
「あんまり俺の帰りが遅いから探しに来てくれたんですか?」
優しく尋ねられても千尋はすぐに答えることができなかった。
風早を迎えにきたのはそうなのだけれど、ここでうなずいてしまってはなんだか自分が風早を信用していなかったようなそんな感じにとられてしまう気がして…
「俺の帰りが遅いから怒ってるんですか?」
この問いにはすぐに千尋は首を激しく横に振った。
風早に怒るなんてそんなこと、あるはずがない。
「よかった。ちょっと複雑な話をされて遅くなってしまいました。すみません。」
そう言って謝る風早はどこか悲しそうで苦しそうで、でも千尋を安心させようとしてくれているのはよくわかって…
千尋はそんな風早を見てたくさん考えて、他に自分にできることが見つからなくておもいっきり風早に抱きついた。
「姫?」
「風早、大好きっ!」
千尋が思い切り抱きついてそういえば、一瞬驚いた風早もすぐに微笑を浮かべて千尋を抱き上げた。
風早に何があったのかわからないし、難しい話もわからないけれど、風早は「大好き」といってあげるといつも喜んでくれるから。
だから千尋は今、自分にできる唯一のことをした。
それは風早に「大好き」といって喜んでもらうこと。
「俺も姫が大好きですよ。だから、これから眠るまでの間、俺と一緒に過ごしてくれますか?」
「うん!」
思ったとおりいつものように微笑んでくれた風早の顔を見て千尋も思い切り微笑むと、風早の首に抱きついた。
すると風早はクスッと楽しそうに笑ってくれて、千尋を抱いたまま目の前の扉を開いた。
今まで千尋が一人で広すぎて寂しいと思ったその部屋は、風早が帰ってきてくれたというだけでとても幸せで安心できる空間へと一瞬で変わったのだった。
管理人のひとりごと
風早はたぶん心ない官人に千尋の悪口でも言われたんですねぇ。
千尋はそういうことを敏感に感じる子供だったと思います。
感じ取った以上はどうにかしたいと努力するとも思うのです。
でもチビ千尋にできることはあまりない。
ということで、風早が一番喜んでくれそうなことを単純に頑張ってますが…
これ、大人になってもやったら凄い女だな(’’)(マテ
で、風早が一番喜ぶのはやっぱり姫に大好きでいてもらうことですよっていうそれだけの話です(’’;
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