
風早は千尋の姿が見えなくて慌てていた。
部屋にもいないし、一ノ姫のところにもいなかった。
風早が千尋の従者となって以来、こんなに完全に千尋の居場所がわからなくなるのは初めてのことだ。
たいてい、千尋の姿が見えない時は、姉のところにいるか自分の部屋のちょっとした空間に隠れているかだったのだが…
風早は青白い顔でふらふらと宮の中を歩き回り、どこにもいないらしいとわかると表へ出た。
千尋はあまり外へは出たがらない。
だから宮から一歩外へ出てしまうと千尋がどこへ行くかなど見当がつかなくて…
風早は一人、千尋が行きそうなところを頭の中で探し続けた。
そして思い当たるところを手当たりしだいに走り回る。
それでもなかなか見つからなくて、足を止めた風早はうめき声さえ上げそうな顔で考え込むとはっと何かに気付いたように駆け出した。
千尋が行きそうな場所に思い当たったのだ。
千尋は花が大好きだ。
花だけじゃない、綺麗なものが大好きだ。
だから、先日風早と散歩中にみつけた花畑にいる。
風早はそう直感して走った。
すると果たしてそこに…
「姫…。」
小さな千尋が花畑の真ん中に座って熱心に何かしているのを見つけて、風早は安堵の溜め息をついた。
「姫、何してるんですか?部屋にいないので心配しました。」
「風早……ごめんなさい。」
急にしゅんとしてしまう千尋を見て慌てた風早は千尋の隣に座ってにっこり微笑んで見せる。
「そんなに気にしないで下さい。怒ってるわけじゃないです、ちょっと焦っただけで…それで、姫はどうしてこんなところにいるんですか?」
風早が優しくそう問いかけると、千尋は膝の上にあった小さな籠を風早に差し出した。
風早がそれを受け取って小首を傾げる。
中にはなにやらたくさんの赤い実が入っていた。
どうやらここに咲いている花が実るとこの実になるらしい。
「俺に、くれるんですか?」
問いかけてみれば千尋がこくりとうなずく。
「風早、いつもいろいろたくさん頑張ってくれるから…だから、私も何かしてあげたくて…これ、食べたらおいしいの、姉様が教えてくれたの…でも…。」
でもけっきょく風早に心配をかけてしまったと千尋が悲しそうにうつむくのを見て、風早は籠の中身を一つ口に入れた。
「有難うございます。とても甘くておいしいです。これは、姫が俺に下さる初めての褒美ですね。」
「ご褒美?」
「ええ。大事に食べますね。」
そう言って笑顔を見せれば千尋はやっと嬉しそうに笑ってくれて…
その笑顔があまりに愛しくて、風早はその小さな体を膝の上に抱き上げた。
「じゃぁ、お礼に俺はこれでおいしいお菓子を作って差し上げますね。」
千尋は風早に嬉しそうにうなずいて見せると、風早の首に抱きついた。
風早はそんな千尋の背中を優しくなでるのだった。
管理人のひとりごと
小さい頃もきっと千尋ちゃんは精一杯頑張ったろうなぁと。
いつも自分を守ってくれる風早に何かしてあげたいって思ったいに違いない!と妄想した管理人(’’)
小さな女の子が好きなもの、それは、綺麗なもの、可愛いもの、甘いもの(笑)
ということで、その中から甘いものを選択してみました。
そしてそれでおいしいお菓子を作る風早父さん……そっちも書いてみたいと思う管理人でした(’’)
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