
「……何をしているんだ?風早。」
「何って、様子をうかがっているんですよ?」
「……だから、どうして俺の様子をうかがっているんだ?」
「千尋を泣かしたりしてないかなと思いまして。」
「……。」
多くの犠牲を払ったあの戦いが終わり、千尋はアシュヴィンの妻として常世に残った。
他の仲間達はそれぞれ自分達の故郷へと帰っていき、風早も一度中つ国へ戻ったのだが…
二月もしない間に風早は常世へやってきたのだった。
そして、ここへ来るなり挨拶もそこそこに千尋にべったりと張り付くこと3日。
4日目の今日は朝からアシュヴィンに張り付いているのだ。
3日の間、千尋を取り上げられた上に朝から張り付かれてアシュヴィンは深い溜め息をついた。
「俺があいつを泣かせるわけがないだろう。」
「そうですか?千尋が言うには、どんなに約束しても勝手に遠出をして心配をかけるし、仕事ばかりでなかなか会えないし、千尋の仕事をくだらないと罵倒したり、色々問題があるらしいじゃないですか。」
「……。」
そう、言われてみれば確かに、互いに想い合ってはいるのだが、アシュヴィンは千尋を怒らせることが多々ある。
久々に会った保護者にそんな愚痴をこぼしたのかとアシュヴィンは舌打ちした。
「ということで、俺が千尋を泣かせないようにしばらくアシュヴィンの様子を見ていることにしました。」
「……それで何か解決するのか?」
「千尋を泣かせるようなことをしたら俺が注意しますから、以後気をつけてください。」
いつものように朗らかな微笑を浮かべてそんなことを言われても、千尋ならともかく風早につきまとわれるというのはどうも気分のいいものではない。
「そこまでしなくとも気をつける。それにあいつは少々心配のしすぎだ。」
「千尋は心優しいんです。仲間のことにだっていつも気配りしていたでしょう?これ以上千尋を泣かせるようなことをするようなら…。」
そこまで言って風早は音もなくアシュヴィンに一歩近づいた。
おかげで鼻が触れ合うんじゃないかというくらいに顔が近づく。
アシュヴィンは思わず一歩身を引いた。
「俺が中つ国へ連れて帰りますので、頑張って千尋を泣かせない立派な夫になってください。」
「……。」
『ふざけるな!』と言おうとしてアシュヴィンは息を呑んだ。
すぐ近くで微笑んでいる風早の目が氷のように冷たく鋭く光っていることに気づいたからだ。
(これは本気だ…)
そう心の中でつぶやいてアシュヴィンは顔色を青くした。
「ど、努力しよう…。」
口をついて出たのは思いとは裏腹のそんな一言。
そしてその言葉を聞いた風早はやっと一歩身を引いて本当の笑みを浮かべたのだった。
管理人のひとりごと
あの千尋バカな風早が黙っているはずがないっ!と思ったんで(笑)
短編の方でこれ以上風早をバカ父さんにするのもどうかと思って拍手SSに…(’’)
千尋のためならアシュヴィンだって威圧します、風早父さん(笑)
もちろん、相手が誰だってお父さんの反応は同じですが、アシュヴィンが一番千尋ちゃんと喧嘩しそうだから(w
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